大気中の成分はほとんどが窒素であることをご存じですか。人間の生存には酸素が必要ですが、私たちが呼吸する空気の78%は窒素で、わずか21%の酸素とその他の微量の気体で構成されています。人体には窒素は不要ですが、さまざまな産業用途でとても役立っています。
窒素とは
まずは基本情報を見てみましょう。窒素は無色無臭の不活性ガスで、生命の維持には役立ちません。しかし、植物の成長には重要で、肥料の主要な添加物です。その使用範囲は家庭菜園にとどまりません。窒素は通常、液体または気体の相状態です(固体窒素とすることも可能です)。液体窒素は冷媒として、食品のほか、医療研究の実験対象の急速冷凍、生殖技術などに利用されています。この記事では、主に窒素ガスについて説明します。
反応性の高い酸素とは異なり、窒素は他の気体と接触しても反応しないため、幅広い用途で利用されています。窒素原子の化学組成では、分離して他の物質と反応するには大きなエネルギーが必要となります。一方、酸素分子は容易に分離するため、反応性が高くなります。これとは対照的に、窒素ガスは必要に応じて不活性な環境を作ります。
不活性は窒素の最大の特性で、酸化速度の調整に利用されます。その典型的用途はエレクトロニクス産業で、回路基板などの小型部品の製造では、緩慢な酸化により腐食が生じるおそれがあります。
緩慢な酸化は食品飲料業界でも発生します。この業界では、窒素により空気を置換して、最終製品の保存状態を改善しています。爆発や火災は急速な酸化の典型例で、反応の加速には酸素が必要です。窒素を使って容器から酸素を除去すると、このような事故の可能性を低減することができます。
レンタル窒素ソリューション
- メンブレン窒素発生装置
- 圧力スイング吸着法窒素発生装置
メンブレン技術の動作原理
圧力スイング吸着の動作原理
現場で窒素を生成する際に、必要な純度レベルを把握しておくことが重要です。タイヤへの空気注入や防火など、一部の用途では求められる純度レベルが低い(90~99%)一方、食品飲料業界やプラスチック成形などの用途では、高い純度レベル(97~99.999%)が求められます。高い純度レベルが求められる場合にはPSA技術が最適で、導入も簡単です。基本的に、窒素発生装置では圧縮空気内の酸素分子と窒素分子が分離されます。圧力スイング吸着では、圧縮空気から吸着により酸素を捕捉して、分離します。
吸着とは分子が吸着剤と結合することです。圧力スイング吸着では、酸素分子が炭素モレキュラーシーブ(CMS)と結合します。吸着は、CMSが充填された2つの圧力容器のいずれかで起こり、分離プロセスと再生プロセス間で容器が切り替えられます。さしあたり、2つの圧力容器をA塔、B塔とします。まず、清浄で乾燥した圧縮空気がA塔に入ります。酸素分子は窒素分子よりも小さいため、炭素シーブの孔に捕らえられます。一方、窒素分子は孔に捕らえられず、炭素モレキュラーシーブをすり抜けます。そのため、求められる純度の窒素が生成されます。
これは、吸着または分離段階と呼ばれます。ただし、プロセスはこれで完了しません。A塔で生成された窒素のほとんどはシステムから出て(直接使用する、または貯蔵できる状態で)、そのうち少量がB塔へ逆方向から(上から下に)導入されます。導入された窒素は、B塔の前の吸着段階で捕捉された酸素を押し出すために必要です。B塔内の圧力を解放することにより、炭素モレキュラーシーブは酸素分子を保持できなくなります。酸素分子はシーブを離れて、A塔から導入された少量の窒素により排気口から放出されます。
これにより、システムでは次の吸着段階で酸素分子を新たにシーブに結合できるようになります。これは、酸素で飽和した塔を再生する「クリーニング」プロセスと呼ばれます。