採鉱業界の進展におけるリチウムイオンバッテリの役割
2024/03/25
二酸化炭素排出量と温室効果ガス排出量を削減するため、全世界の産業界で大きな努力が払われていますが、その鍵となる要因は、再生可能エネルギー源の採用です。技術的に進歩した現在の採鉱業界では、ポータブルエアと電力がますます重要になっており、生産性と操業効率の向上にバッテリが重要な役割を果たしています。
近年、鉱業などの産業用途で最も広く使用されているバッテリは、主に鉛酸バッテリ、ニッケル鉄(Ni-Fe)バッテリ、リチウムイオン(Li-ion)バッテリの3種類です。高いエネルギー密度、比較的低い自己放電率、メモリ効果が見られないことといった特性を持つリチウムイオン電池は、その高い汎用性と高効率性で知られており、多様な用途に適しています。
リチウムイオンバッテリの最も顕著な利点の1つは、容量を大幅に低下させることなく多数回の充放電サイクルに耐える能力です。限られたサイクル数の経過で性能が急速に劣化する他のバッテリとは異なり、リチウムイオンバッテリは数百回のサイクルに耐えるつつ最適性能を維持できます。この特性によりバッテリの寿命が延びるだけでなく、長期投資の収益性が向上します。
リチウムイオンバッテリの場合、従来のバッテリに共通する問題であったメモリ効果は問題になりません。完全な充放電サイクルが必要な旧式バッテリとは異なり、リチウムイオンバッテリは、メモリ効果の影響を受けません。あらゆる負荷レベルで充電できるという利便性は、運用上大きな価値を持つうえ、バッテリ寿命が長くなるのです。
リチウムイオンバッテリベースの採掘業界向けソリューション
鉱業用途向けの効率の高い最先端ソリューションの分野で、リチウムイオン電池ベースのソリューションは、持続可能性の高い事業慣行の新時代を先導する存在です。その意味で、アトラスコプコは、過去数年間で最も先進的で信頼性の高い企業の1社として位置付けられており、最先端技術をシームレスに統合して、採鉱作業に効率的で責任ある電力供給ソリューションを提供しています。この先進的なアプローチは、採掘用途の差し迫ったエネルギー需要に対応するだけでなく、環境への影響を低減するコミットメントを明らかに示すものですが、同時に、持続可能性の高い未来に向かって採鉱業界を推し進めるというコミットメントを示すものでもあります。アトラスコプコの電力、照明、圧縮空気向けリチウムイオンバッテリ駆動ソリューションは、エンドユーザーの生産性を向上させ、より安全で健康的な作業環境を実現します。こうしたソリューションは、エネルギー効率の高い採掘作業に向けた戦略的な飛躍を表し、業界全体を未来に推し進めるものです。
ポータブルバッテリ駆動ユニットによる圧縮空気生成
最近発売された世界初のバッテリ駆動ポータブルスクリュコンプレッサアトラスコプコB-Airは、採鉱業界を高効率で低炭素の未来に向けて変革する転換点となりました。内燃エンジンから電動モータへの切り替えには、ローカルでの排出量がないことを含め、各種の利点があります。実際、B‑Air 185-12は、CO2排出量を140 t削減しすますが、これは乗用車約30台の年間排気量に相当します。
また、B-Air 185-12の電動モータは、ディーゼルエンジンコンプレッサと比べて可動部品(ひいては摩耗部品)がはるかに少ないため、休止時間と保全作業が大幅に削減されます。ディーゼルエンジンユニットの500時間ごとではなく、2000時間ごとの点検しか必要ありません。一方、バッテリパックは、トリプルエンクロージャーで保護されており、液体冷却式でパフォーマンスを最大限まで高めます。
最先端の可変速駆動(VSD)とマグネットモータにより、モータ回転数がリアルタイムの空気需要に合わせて自動調整され、エネルギー効率が最大70%向上します。
他のアトラスコプコポータブルエアコンプレッサすべてと同様に、B-Airは、厳しいテストプロセスにより、最も過酷な気候条件(-25~+45℃)でも最適な性能を発揮することを証明済みです。
エネルギーストレージシステムは、採掘作業の電源を一新します
バッテリベースのエネルギー貯蔵システム(ESS)を使用することで、鉱業会社は、エネルギー生成、配電、消費を最適化して、臨時の電力用途を完全に制御下に置くことができます。ZBPとZBCの製品レンジで構成されるアトラスコプコのエネルギー貯蔵システムは、採掘場や地下鉱山など、遠隔地やアクセスしにくいロケーションへの設置に好適です。このユニットは、高いエネルギー需要と可変負荷プロファイルの用途に最適であり、制限下にあるグリッドの可用性を強化し、低負荷とピークの両方に対応します。
この革新的なリチウムイオンESSポートフォリオは、スタンドアロンとしても同期型としても運用でき、発電機や再生可能エネルギーなど複数のエネルギー源を備えた分散型ハイブリッドシステムの中心となります。さらに、移動式太陽光発電所の開発と鉱業への組み込みにより、そこで発電した再生可能エネルギーを保管し、持続可能な現場での作業に供給する上で、エネルギー貯蔵システムが重要な役割を果たします。こうしたバッテリベースユニットは、規制を満たし、コストを削減しながら、採鉱企業の柔軟で信頼性の高い電力導入を支援します。こうして、業界のポータブルで持続可能なエネルギーソリューションへの移行を促すのです。
生産性向上のためのエネルギー効率に優れた照明ソリューション
従来、採掘現場の照明にはディーゼル駆動のライトタワーが使用されてきましたが、近年、稼働日の増加と安全確保の要求が高まったことで、エネルギー効率に優れた代替手段が開発されてきました。電力によるライトタワーとソーラーライトタワーにより、燃料消費削減が可能で、運用にあたり騒音排出、光排出、CO2排出の量の規制に準拠したコスト削減ソリューションを利用できます。
アトラスコプコ最新のソーラーライトタワーHiLight S2+には、太陽から放出されたエネルギーを蓄えるリチウムイオンバッテリが搭載されています。太陽光が太陽光発電パネルに捕捉され、4つの90W LEDフラッドライトに電力を供給します。この革新的なライトタワーは、高効率かつ高性能で、作業者に良好な視界を提供し、良好な天候条件であれば、年間を通じて自律的に動作します。
アトラスコプコは最近、すでに知られている新タイプの照明ソリューション、ハイブリッドライトタワーのラインナップにHiLight BI+4を加えました。この製品は、バッテリと低燃費のステージVディーゼルエンジンを組み合わせることで、最大限の柔軟性を実現しています。バッテリによる機能を導入することで、エンジンの使用量が減り、ユニットの寿命が延び、総所有コスト(TCO)が低い臨時照明ソリューションを実現します。
リチウムイオンバッテリの最終処分について
アトラスコプコは、国際規制を遵守し、B-Air 185-12コンプレッサ、エネルギー貯蔵システムポートフォリオ、太陽光/ハイブリッドライトタワーのバッテリがライフサイクルの終点に達した時点においても責任を負います。このプロセスでは、まず使用済みリチウムイオンバッテリを回収し、安全かつ確実に一時保管します。この手順は、バッテリの状態と種類に基づいて適切な取り扱いと分別を確保するために重要です。アトラスコプコは、リチウムイオン電池を効率的かつ安全にリサイクルするために必要な専門知識と機器を備えたリサイクル専門企業と協力しています。
バッテリは、一定時間の経過後分解され、その構成部品の売却が可能になります。これは、環境規制に準拠しているだけでなく、廃棄物の削減によって収益を創出し、経済的な利益をもたらします。アトラスコプコ製品で使用されるバッテリは、循環型経済性を念頭に設計されており、再製造のプロセスを通じて二次寿命を得ることもできます。一定程度の劣化があっても、家庭用電源システムなど、低負荷用途に再利用することが可能です。「二次寿命」バッテリの再利用により、電子部品廃棄物を大きく削減し、環境負荷を低減できます。再利用バッテリは、容量が低下していてもまだ十分な性能を発揮し、最大4年間の寿命延長が可能です。
各種バッテリタイプの概要
バッテリ仕様 |
鉛酸 | ニッケル鉄(Ni-Fe) | リチウムイオン(Li-ion) |
エネルギー密度 |
25~40 Wh/kg |
40~60 Wh/kg |
90~190 Wh/kg |
効率性 |
50~70% |
70~90% |
80~90% |
ライフサイクル放電率(80%) |
200~1000 |
1000 |
2000~4000 |
DoD |
60% |
80% |
80% |
充電容量 |
8~16時間 |
2~4時間 |
1時間 |
自己放電率/月 |
5~15% |
20% |
5%未満 |
最大充電電流 |
0.05C |
1C |
2C |
充電温度限界 |
-20~50℃ |
0~45℃ |
-15~45℃ |
保全要件 |
3~6か月(イコライゼーション) |
30~60 dpi(放電) |
なし |
毒性 |
高 |
高 |
低 |
コスト(サイクル/kWh) |
中型 |
中型 |
非常に低い |
アプリケーション |
定置 |
定置 |
主 |