温度管理は、電気自動車の高電圧バッテリーにとって重要な役割を果たします。バッテリーセルは、特定の温度範囲内でなければ最高の性能を発揮できないので、過熱しないようにしなければなりません。セルが機能することで生じる熱を周辺に効果的に伝達するために、バッテリートレイにはサーマルコンパウンドが塗布されます。接合プロセスにおけるこの重要なステップの詳細をご覧ください。
熱伝導性コンパウンドは、電気自動車で使用される大型バッテリパックのアクティブな熱管理を支えています。このコンパウンドは、セルの充放電によって生じる熱を冷却構造部に伝達します。これにより、バッテリがその最適な温度範囲内で動作可能となり、過熱することもありません。これは、最近の電気自動車が直面する安全、性能、そして充電時間の範囲や短さに関する市場の要望に応える上で重要です。バッテリ生産の接合プロセスでは、空気の混入を防止しながら熱伝導性フィラーを含む材料を高い精度でバッテリトレイに塗布し、その後にセルユニットを液状材料の上に設置します。アトラスコプコの固定システムは、粘性のある熱伝導性コンパウンドの接合時の挙動を考慮して、コンパウンドを均一な層の状態で所定位置に配置し、ハウジングとバッテリモジュール間の最適な接触状態を確保できます。
最適な塗布パターンの決定
コンパウンドの熱伝導性を確保するためには、空気を混入させずに正確に塗布することが不可欠です。このコンパウンドは、高流量で大量に塗布されることが多いため、これは困難です。接合プロセス、材料特性、部品の形状に応じて、モジュールが空気を混入させずに確実にコンパウンドに接着されるために利用できるさまざまな塗布パターンがあります。これらのパターンには、平行線、蛇行、または骨格状の塗布パターンなどがあります。
各ケースで最適な塗布パターンを決定するためには、通常、包括的なテストが必要です。ブレッテンにある当社のイノベーションセンターでは、バッテリメーカー、機器メーカー、材料供給業者を、当社の接合専門家と結びつけます。
“一緒に、テストセルで適切なプロセスを開発し、プロジェクトの特定の要件に合わせて材料、計量機器、プロセスを調整します”
Udo Mössner アトラスコプコIASのバッテリ接合の専門家
アトラスコプコは、著名な研究機関と協力して、材料特性と押付力に基づいて可能な限り最適な塗布パターンを決定するための新しいシミュレーションにも取り組んでいます。これは、将来、時間や費用を節約する可能性のある方法です。
ライン内におけるギャップフィラー塗布の品質監視
ビードの幅、位置、および連続性については、計測ヘッドに統合されたカメラセンサーシステムによる連続モニタリングが可能です。接着剤ビード内の空隙などの塗布エラーは直ちに検出されるため、その後の修正が可能です。アトラスコプコの最新システムには、コンパウンド内の切れ目を自動で修正するためのビード修正機能があります。この機能は、短いサイクル時間を維持し、作業のやり直しや品質保証の費用を減らします。
誤差の補正:必要に応じて大きく、可能な限り小さく
熱伝導性コンパウンドの有効利用は、熱的に効率性が高まるだけでなく、費用の節約にもなります。ただし、コンパウンドを充填するときは、バッテリートレイとセルモジュール間の取り付け公差を考慮することが重要です。さまざまな部品の公差により、ギャップは0.5 mmから大きい場合は3 mmにもなることがあります。生産プロセスにおいては、最大公差に達していても切れ目に十分充填されるように、メーカーがコンパウンドを過剰に塗布することが多くあります。こうした理由から、多くのメーカー、工場建設の請負業者、そして計量のスペシャリストらは、必要とされる量のコンパウンドが塗布されるように、余念のない取り組みを行っているのです。アトラスコプコのエキスパートは、ハウジングとセルの測定、そして各部品の組み合わせによって生じる隙間公差の正確な判定のための、3Dスキャナーを用いたソリューションを開発しています。これにより、ギャップへ正確に充填するのに必要なコンパウンド量の計算が可能となります。そしてこの量が、従来のようにロボットの速度任せになるのではなく、計量システムによって正確に制御されるのです。「コントローラを用いた量の調整は非常に正確です。プロセスに関して言えば、ロボットのプログラム作業が不要になるのであれば、大きなメリットになりますね。これにより、従来のソリューションと比べると、コンパウンドが最大で50%節約されるでしょう」メスナー氏はこう述べています。
注入:最初にモジュールを固定してからギャップに充填する
一部のメーカーは、バッテリモジュールを熱伝導性コンパウンドに押し込まずに、コンパウンドをギャップに注入することを決定しました。ギャップは後ろから前に充填されます。こうすることで材料を節約することもできます。主なメリットは、繊細なバッテリセルに力が加えられず、柔らかい材料への空気の混入や固定が不均一になるリスクが最小限に抑えられることです。デメリットは、接合部の目視検査ができないことです。「当社のイノベーションセンターでは、すでに熱伝導性コンパウンドの注入に関するいくつかの試験を実施しています。
このアプローチを採用できるかどうかは、お客様のプロセスと個々の材料に大きく依存します。低粘度のコンパウンドを使用する必要があります。ギャップが小さすぎると、注入に高圧を使用する必要があり、セルに損傷を与える可能性があります。」
摩擦から保護するための専用装置
すべての熱伝導性コンパウンドは、熱伝導を確保するために高いフィラー濃度を有しています。通常、これらの充填剤は、工場部品の内面を急速に摩耗させる摩耗性物質である、酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムで構成されています。特に、バルブシートなどで多い流量が予想される場合は、炭化物のコンパウンドが使用されることがあります。また、流速を抑えるために部品の直径をできるだけ大きくする必要があります。こうすることで、摩耗は最小限になります。信頼性を高めるには、熱伝導性コンパウンドの生産性の高い取り扱い、専用設計された丈夫なポンプや計測用部品が必要です。SCA製品ラインには、最高の耐久性を持つ特殊な部品が用意されています。