高揚程ポンプは、数多くの産業用流体制御システムにおける主力です。その役割が極めて重要となるのは、特に石油&およびガス部門での水移動、自治体での水の処理および供給、工事や採掘における排水用途などで、そこでは地上水の制御と除去が安全性に関する最大の関心事です。
このような用途で重要なのは、ポンプが長期間にわたって安定動作することです。平均修理時間(M.T.T.R.)と、修理や整備を完了するために必要な時間の両面から見て、メンテナンス時の停止は最小限に抑える必要があります。予期しない機能停止が、たとえばシールの故障やインペラの早期腐食などによって起きると、生産性、運用効率、運転安全性、収益性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ポンプの課題
しかし、高揚程ポンプのメンテナンスが困難な場合があります。これらのポンプは、多くは狭い場所や離れた場所に設置して使用するものです。結果として、過剰な振動や異常な摩耗、さらには亀裂など、性能が低下した場合の初期兆候を見つける目視検査の機会が減ります。これらの悪条件に加えて、ポンプそのものの設計を考慮しなければなりません。効果的に作動させるには、流量が最大になり、漏れが最小になるポンプ構造にする必要があります。ところが、外部ケーシングを頑丈にすると油圧エレメントへのアクセスが困難になり、メンテナンス効率が低下してしまいます。
もちろん、外部ケーシングの一部に隙間ができることは、ポンプの設計上仕方ありません。たとえばインペラシャフトがポンプハウジングに入る箇所などです。この場合、機械的シールが導入され、流体の漏れを防いで異物を排除することによりポンプの完全性が維持されています。マイナス面は、機械的シールには独自のメンテナンス要件があることです。機械的シールは漏れやすかったり、ポンプが乾燥運転すると損傷したりする可能性があります。設置が不適切な場合やシール周辺をきれいにしていない場合も、早期故障に至る可能性があります。
高性能の新型ヘビーデューティPAC Hポンプの開発において、アトラスコプコが重視したのが、ポンプとシールの設計を改善してM.T.T.R.を高め、ポンプメンテナンスに伴う時間とコストを削減することでした。
設計の改善
ポンプの油圧系へのアクセスの問題を解決するために、革新的なヒンジキットが開発されました。これは「スウィングドア」で構成されているので、ポンプの内部機構にすばやく簡単にアクセスできます。インペラを取り外すためのボルトをひとつだけにすることで、メンテナンスしやすさがより向上しました。摩耗リングはボルト締めされているので、プレス部品と比べて正確かつ簡単に交換できます。さらにリンクベルトを使用することで、装置のウェットエンド全体を分解することなく交換できるようになりました。
PAC Hポンプに標準搭載されているセミカートリッジシールは独自の設計で、正面からシールにアクセスして交換することができます。アトラスコプコのシール設計によってポンプを分解することなく交換できるため、リップシールとインペラへのアクセスが簡単になり、その結果ダウンタイムが減り、メンテナンスが簡単になりました。シールオイルバスが内蔵されているのでポンプを乾燥運転しても損傷がなく、目視点検ポートで漏れ点検を簡単に行なえます。
ポンプの寿命を延ばし、シールを保護するため、アトラスコプコは独自のクローズドインペラとデフレクタベーンを開発しました。これには2つの利点があります。シャフトとインペラのスラストバランスが向上するため摩耗が最小限になり、機械的シールがきれいに保たれます。また、このベーンがつくり出す渦の作用により、屑の蓄積が抑えられます。そのおかげで機械的シールの寿命は3倍に伸びました。さらに、ポンプをきれいに保つために水で洗い流す必要がなくなるため、ポンプの運転寿命を通してエネルギーとコストを大幅に節約できるようになりました。
より効率的にメンテナンスすることでダウンタイムをさらに抑えるため、PAC Hポンプはデジタルテクノロジーを活用しています。QRコードが装備されているので、スキャンするだけで部品や予備部品に関する重要な情報が得られます。また、安全にリモートからモニタリングできるFleetLinkの機能を活用できるため、ポンプの運転を常に制御できます。
結論
アトラスコプコは、一連の革新的な設計を通じて、油圧系にアクセスしにくい問題と、消耗品交換のような簡単な作業でもポンプを分解しなければならない問題の解決に当たりました。その結果、MTTRが最大30%短縮されました。
しかし、ポンプ設計の改善だけで、効率の向上と稼働時間の最適化が成し遂げられるわけではありません。スペア部品と適切なトレーニングの提供も不可欠です。アトラスコプコのグローバルネットワークのカスタマーセンターが、これらのサポートサービスを提供します。
電動ポンプとディーゼルポンプ
同じように、この決断は工事、鉱業、公益事業、自治体などの各分野での業務に使用する排水ポンプ技術を選ぶ際にもいえることです。
しかしこれは、自動車に関する議論のように技術的優位性を競って勝者を決めるものではありません。これは、機器の性能と能力を排水用途のあらゆる側面と一致させることをベースにした常識的な選択プロセスです。どんな決定をする際にも、必要な量、流量/揚程の仕様、ポンプを使用する水と物質の構成といった重要要素を考慮する必要があります。ポンプ能力には、運転条件、現場...